
"世界中の患者さんの健康状態を改善するために、革新的な治療法を提供し、患者さんの人生を実り多いものにすることに全力で取り組みます"というミッションで、様々な医療機器・サービスを提供している医療機器メーカー、ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社。
よりよいサービス、製品を提供しつづけるため、2015 年から全社横断的な業務をより効率化する改善プロジェクトに取り組んでいます。今回は、その中のプロジェクトの1つ、契約締結のための申請/承認システムに焦点をあて、業務プロセス改善の実例を伺います。
ボストン・サイエンティフィック ジャパン株式会社(以下、ボストン・サイエンティフィック ジャパン)は、全世界で約 23,000 名以上の従業員、12 カ所の製造拠点を擁し、100 カ国近くの国で活動をおこなっている企業の日本法人です。国内においても本社以外に全国各地に 13 の拠点があり、日本全国で活動をおこなっています。
「国内外のお客様やパートナー様との様々な契約は、当本部が関わるもので年間に 2000 件程度あります。以前はすべての契約承認プロセスが紙ベースで行われており、Microsoft® Access で契約締結状況を記録していました。また、契約書によっては本社内だけではなく、全国の営業所、さらに内容によっては海外の役員にも承認を得る必要があり、それらのやりとりも紙ベースの申請資料を社内便で送付し、承認を得ていました。そのため、1 つの契約案件の承認完了までに通常で 2、3 日、中には数ヶ月を要するものがあり、これらの承認プロセスの効率化が急務の状況にありました。」 法務・コンプライアンス本部 稲田 公晴氏は当時を振り返ります。
このような状況のなか、同時期に全社で横断的な業務を効率化するためのプロジェクトが立ち上がり、本業務に関してもそのプロジェクトの一環として改善を行う事が決定されました。プロジェクトチームで業務ニーズを調査し、ニーズに沿ったシステムとしてワークフローの機能をもったシステムや社内ツールなどを調査したところ、海外の AMEA(Asia, Middle East and Africa)地域で SharePoint Server と Nintex Workflow を使った導入事例があることがわかりました。当時そのシステムは、IT 部門の中で限定的に使っているという状態でしたが、すでに社内の別部門での評価が進んでいたシステムだったこともあり、今回の契約締結のための申請/承認システムも SharePoint Server と Nintex ベースで検討を行うことになりました。
オペレーショナル・エクセレンス部 プロジェクトマネジャー 坂本 加奈子氏はシステム選定の経緯と実際の開発について次のように語っています。
「業務プロセスも状況により様々に変化していくため、変更に強いシステムが欲しかったのです。SharePoint と Nintex なら、変更があるたびに IT ベンダーに依頼するのではなく、自分たちで対応が可能なのでは?と思いました。アジャイル型開発で短期間でシステム開発を完了させたかったのです。」
実際の開発では、2015年の3月に企画がスタートし、9月初旬にカットオーバーということで、約半年でシステムが完成しています。「現場からの要望は多くありましたが、全部を実装していたら時間がいくらあっても足りません。それを現実的なところに調整するのが大変でしたが、"小さく産んで少しずつ改善していく考え方"を説明し、現場部門の理解を得て、ハードルを現実的なレベルにもっていきました。それが短期間で開発を終えることができた秘訣です。開発自体は順調にスケジュール通りに完了しました。」(坂本氏)
実際のシステムでは、SharePoint Server 2010 の サイト上で、Nintex Workflow 2010 と Nintex Forms 2010 を使い、ワークフローシステムが構築されています。[事前協議]、[申請承認]、[最終確認]、[正本印刷と押印済みファイルの保管]といった従来の紙でのプロセスがすべて電子化され、どの拠点からでもどの部署からでもアクセス権があれば、必要なデータに即時アクセスすることができるようになり、常に最新の契約書を簡単に保存したり閲覧したりできるようになりました。
"何より個々の申請プロセスを大幅に時間短縮できたことが大きいです。実際2,3 日かかってたものが、わずか 5 分程度ですべての処理が終わるものも多くあります。また、紙の使用量が目に見えて削減できたことがうれしかったです。大量の紙での作業はストレスがかかりますから。"
"電子化できたので、検索が簡単にできるようになりました。新たに契約書をつくるときも、「あのときの契約書を参考にして作りたい」と思うときに簡単に引き出すことができて、作業は大幅に効率化できています。"
導入後の業務を通して、プロジェクトのメンバーが現場部門から様々なフィードバック受けましたが、概ね好意的な意見、役に立っているという意見が多く、導入して良かったとメンバー全員が口をそろえます。
「実際、現場の方々から推薦を受け、社内での表彰、Function Award(バックオフィス部門の優秀賞)に選出されまして、AMEAリージョンの Award にもノミネートされました。自薦ではなく他薦で推薦していただいたことはとてもうれしく思っています。」(坂本氏)
現場部門では、紙での事務処理、発送業務から解放された代わりに、システムの運用管理業務が発生しているため、関連の作業がゼロになったわけではありません。しかし、IT バックグラウンドがない人でも日常的なメンテナンス対応ができ、比較的初心者にも親しみやすいシステムであるため、大きな負荷にはなっていないようです。
また、全体的な手間を大幅に削減できたことでより重要度の高い業務に集中することができるようになり、さらに残業時間の短縮や休暇の確実な取得など、労働の質の向上という副次的な効果も生まれています。
ボストン・サイエンティフィック ジャパンでは、システム導入後、契約締結のための申請/承認業務だけではなく、他業務でも SharePoint と Nintex を使ったシステムの実装を推進しています。
「今では、他部門の別の申請承認業務も電子化して運用に入っています。また、直近のプロジェクトでは開発を IT ベンダーに依頼せず、トレーニングを受けた自社の担当者だけで社内のワークフロー業務の効率化のためのシステムを構築しました。今後も SharePoint と Nintex を活用して、他の業務プロセスも効率化を行っていきたいと思います。」(坂本氏)
申請承認のプロセスは、1つ1つは小さな作業です。しかし、それらが積み重なって組織を横断するプロセスとして考えてみると、繰り返しを伴う大きな負荷の作業になるのです。よって、それらを効率化することで、大きな手間を削減し、より重要な業務に使う時間を創出することができます。今後も、 SharePoint と Nintex はボストン・サイエンティフィック ジャパンの業務効率化にはなくてはならないツールとしてより多くの業務効率化に貢献できることでしょう。